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実の所ソーニャは詩歌藩国滞在を全く考えていなかった。
「だって美少年いないじゃん」
美男美女が多い事で知られる詩歌藩国であったが、美少年は主要メンバーの中に一人も居なかったのである。
事の発端は、小笠原リゾート体験ツアー前(デモプレー)のこと、リゾートのゲストは誰がいい?という希望調査にて、そう言えば岩崎にもう一度会いたいなぁと思い投票した所同じく岩崎に投票していた経という女性と出会った事だった。彼女は岩崎の熱烈なファンで「とにかく彼に会いたいの!」とうっとりした表情で語っていた。そんな彼女の真直ぐな思いに共感したソーニャはたちまち意気投合、旅人である事を彼女に教えると「それならウチに来ればいいじゃない」と笑いながら言った。

断る理由はいくらでも思いつけた「いや美少年探す旅してるんで………」「私、猫一辺倒でして」「帝国ってちょっと名前が怖そうで」が、はっきり言ってこれらは失礼すぎる上に最初のセリフ以外は理由にすらなっていなかったので結局ソーニャは断らなかった。
もっとも、彼女の気さくな笑顔の前には最初から断る術等なかったのだが。

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「つ、着いてしまった………」
「ようこそ詩歌藩国へ」
入国前、念のため無名騎士藩国でお土産に貰った犬耳&しっぽを付けて入国する
「変わったアクセサリーですね」
と入国審査官に言われた、あれ~?
「ええ、これ最近むこうで流行ってるんですよ、ホホホホホ………」
とりあえず笑顔でごまかす、若干乾き気味。

ところでこの犬耳&しっぽソーニャが笑ったりするとピコピコという擬音と共に上下に動く無駄にリアルなギミックが搭載されている。これの制作者はよほどの凝り性だったのだろう。実際の所あまり役に立つどころか、かえってへんなヤツに見られてしまったのだが。

国王との謁見、臣民の方々数名との目通りも済ませ、さて私はこれからどうしようと宮廷内を歩いていると庭園にて人影を捉えた。ソコには半ズボンから伸びでた白い生足が眩しい金髪の美少年がいた。 (美少年ハンターソーニャEp4に続く)
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2007.06.14 Thu l 詩歌藩国滞在履歴 l top ▲
「今回はシリアスです」
「珍しいね………」
「ヒド」
最近アイドレスに参加した友人との会話

詩歌藩国に限ったことではないが、現在有事体勢のまっただ中である。敵の偵察機が迫って来ていたのだ、犬猫問わず各藩国で防空設備、兵器の作成、作戦の立案等、本土を叩かれれば一巻の終わりと言うこともあってか、不眠不休の作業が行われていた。ソーニャはそんなこと等つゆ知らず、茜大介を追いかけ回していた。

しかしこの不眠不休の努力が予想外の悲劇をもたらすのである。

ニューワールドに死の灰が降った………

ここ最近の対根源種族戦闘により、過剰なまでに高まった防衛意識は近寄る敵を問答無用で迎撃する防衛システムへと転化し、彼我不明の機体に警告を発すること無く攻撃を開始する。防衛システムは確かに機能し、不明機2機を撃墜したのだった。これに驚いた不明機の編隊は自衛用の核弾頭を大量に投下しレーダージャミングをバラまいて撹乱を行い、その隙に撤退した。

被害規模は天文単位的なものとなり、死の灰による太陽光の遮断による環境被害は即座に食料恐慌を引き起こすこととなる。

そして詩歌藩国、先の戦闘において藩王が戦団長を務めたことからその責任をとわれるものであろう、『はじめての戦闘』の再来である。根源種族を警戒するが故、防空作戦の初歩である彼我不明機の正体を見極める行動を怠り、結果的に不意打としかとりようのない攻撃を行い、さらにはその反撃でニューワールド全体に甚大な被害を及ぼしたのだ。処刑どころでは済まないだろう。

「楽しい藩国ライフはお預けの様ね………」

ソーニャは、目を閉じて、呼吸一つ置いた後、ゆっくりと開いた。目つきが少し鋭くなった様な気がした。
2007.06.14 Thu l 詩歌藩国滞在履歴 l top ▲
「ところでこれ、今が使い時なんじゃないかしら?」
「何をバカなことを………」
「私も人柱になってあげるわ」
「早まるのは止しなさい!」
詩歌藩国の石像の前で。

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空は黒く濁り星空すら見えない、地上の人間は絶望に打ちひしがれ、後はのたれ死ぬだけかもしれなかった。

詩歌藩国王城、藩王は不在であった。先の戦闘における責任追及、あるいは状況説明に追われていることだろう。城下では暴動あるいはデモが起こっており危険な状態にあった。幾度となく滅亡の危機を乗り越えて来た詩歌藩国と言えど今回はどうなるか分からない。さらに現状で敵との対話は絶望的で有ると言うことだけは確かだ。相手はこちらが奴隷になればもうけものとしか考えていない。彼らの示す降伏条件を要約すれば「死にたくなければ奴隷になって資源や燃料を掘り続けろ、民衆を押さえ込むための武力は貸してやるから、あとついでに目障りな国と指導者、武器はこわしておけよ」というものである。

が、しかしソーニャは旅人で藩国の一大事等とは無縁である、10日間過ぎれば次の国に旅立つだろう。

それでいいとは思っていなかった。

そこに美少年がいる限りソーニャがそれを見捨てる訳には行かないのだ。ここでこの国を見捨てて出て行く等美少年ハンターの名折れである。

旅人になる際に定めた自身のルールに従い詩歌藩国にての滞在期間の延長を決定。当面は詩歌藩国滅亡回避のために尽力する。

ソーニャは強い決意を心に決め、行動に移り始めた。

ソーニャは手荒ながらも一つの策を考えた。詩歌藩国に眠る石像これを運用することはできないかと?この石像はACE数名の死か、或は100名以上の犠牲によって動き出すという。これを使うことは出来ないだろうか?確か奇跡の治療を持った藩があるのでACE5人にわざと死んでもらって石像を起動させた後に奇跡の治療で死んだACE達を復活させるのだ、足りない分は名医の治療判定頼みとなるが単機で最も高い評価を弾き出すこれを奇襲で運用すれば敵のレーザー兵器を破壊することだって可能かもしれない。

暗澹たる考えを思い描きながらソーニャは石像の前に佇んでいた。星月典子が通りかかったのはそんな時であった。
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詩歌藩国滞在6~8日目(アイドレス)
石像を見上げながらソーニャが思い描いた暗澹たる策は見向きもされる事無く交渉は始まった。結論から言えばソーニャの不安はただの杞憂に終わる。ニューワールドに生きる人々の思いと声が撃雷号を動かし、見事敵を打ち破った。(藩王様が可愛い事で有名な国だ)何かを犠牲にして勝利しようと言う考えは間違いだったのだ。ソーニャは自分の不徳さを恥じた後、戦後復興に尽力する事にした。

時を同じくして食糧難が訪れると頭角を現わす事で有名なリワマヒ国が大規模な炊き出しを開始した。ソーニャも微力ながらこれに参加していた。その結果、各国に大量の食料が振りまかれ食糧難の危機が一時的にとはいえ回避されたのだった。そして次は放射能問題の解決に移る。リワマヒのアイデアにより放射能除去ひまわりの開発と配布が提案された。ニューワールド中をひまわりで覆い尽くす、実に素敵な事業である。

そして、ソーニャにとって忘れられない日々が始まる。
2007.06.14 Thu l 詩歌藩国滞在履歴 l top ▲
私の目の前にあるヒマワリ畑こそが、世界一美しいヒマワリ畑だと確信する。

                  ーソーニャの手記よりー

黒く濁った空の下、大地は灰色の塵埃に汚され、植物はその命を絶たれたかにみえた。そんな中、政庁付近の元々は畑だった場所に真っ白でずんぐりとした防護服に身を包んだ一団が横一列に並んで屈んでいた。いや、よく見ればその一団は屈んだ姿勢のままゆっくりと後ずさっていた。その一団の中にソーニャはいた。

呼吸の度にバイザーが白く曇る。その防護服は宇宙服に比べれば何とも安っぽい出来合で本当にこれで放射能対策が出来ているか疑問であった。そんな事を気に留める事なくソーニャは黙々と手を動かしていた。手には袋一杯に詰まったヒマワリの種が握られている。彼女は、いや彼女の周囲に居る人々全てはこの種を蒔いているのだ。


かつてのソーニャならこんなモノを着て放射能の残留する場所に出ようとはしなかっただろう。自身の安全を考慮しての判断をするだけである。考え自体は間違いではない。だが、無惨に変わり果てた景色を前にし、ソーニャの気持ちは大きく揺らいでいた。これまで目にしていた景色が突然変わり果てると言う経験はソーニャにはなかった事だ。もしソーニャが本物のネーバルであれば、一生を船の中で過ごすが故に、そのような光景を目にするとすれば母艦が大破した時くらいであろう。残念ながらソーニャ自身もその辺りの記憶について曖昧な部分が多く事実については確かめようもなかったが、本人にとっては初めて尽くしの地上生活はソーニャに地球人的な感性を与えると共に、感情にも大きな影響をもたらしていた。むせ返るようだった木々の植物の匂いが今は懐かしく、季節による景色の変化が愛おしく思えた。
核による汚染がニューワールド中に広がったときのこと、その光景を目の当たりにしたソーニャは呆然とした。

これに対して打開案を示したのはリワマヒ国である。かの国は犬猫問わない空前の規模の食料支援を行い、それによって得た信頼を背景に各国から基金を集め、放射能除去ヒマワリの開発を行ったのだった。資金集めは難航したモノの、ニューワールド中の国々が互いに手を取り合って捻出した1000億の資金を元手に開発を成功させると藩国中に配布を開始した。

そして今ソーニャ達はその種を蒔いているのであった。被爆の恐怖と隣り合わせになりながらの種まきは神経も体力も極限まですり減らす重労働であった。実際何名かは医務室に運ばれている。

それから一夜が明けた。
外を見た人々が次々に歓声を上げた。晴れやかな朝日がそこにあったのだ。そして眼下には絨毯の様に敷き詰められたヒマワリが咲き誇っていた。互いに手を取り合いながらヒマワリ畑へと駆け寄る人々。そんな光景を眺め立ち尽くすソーニャ。目から涙が溢れた。

が、しかし美談はココで終わる。

次の瞬間ソーニャの目に飛び込んで来たのは茜大介の姿であった。昔のマンガの様にソーニャは目をハートマークに変えると「あっかねくぅぅぅ~ん!」と叫びながらヒマワリ畑へと駆け出して行った。

(後編へ続く)
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